2019/10/22


畑の隅に繁茂している雑草、カナムグラ。強靭なツルと、全体に生えている硬いトゲが厄介なこの植物ですが、どうやら「葎草(りつそう)」という生薬にもなる有用植物とのことなので、お茶にして飲んでみました。(過去の野草茶シリーズ


カナムグラはアサ科カラハナソウ属の一年草です。つる植物で、鉄(かね)のような強靭なつるをもっているのが名前の由来だそうです。また、「葎(むぐら)」は広い範囲で生い茂るつる植物を指す語です。


つるの表面には、小さく硬い棘が無数についており、これで周りの植物などに絡みつきながら繁茂していきます。つるはとても硬く、なかなか切れないため、迂闊に素肌を晒してカナムグラの藪に突っ込むと擦り傷が沢山できます。刈り払い機で草刈りをする際も回転場に巻き込んでしまうので、畑に生える雑草としてはなかなか厄介な植物です。


カラハナソウ属と言えば、ビールの製造に使われるホップは和名でセイヨウカラハナソウと呼ばれ、同じカラハナソウ属に属されます。このカナムグラもホップによく似た実をつけるのですが、これは残念ながらホップのような用途には利用できないとのこと。


葉、茎、実ともに生薬になるため、採集したカナムグラはそのままざっくりとハサミで細刻んで乾燥させます。

乾燥させたものを、ヤカンにIN。しばらく煮詰めます。

煮詰めているときは、控えめですが、家庭で漂っていて違和感のないようなお茶らしい?良い香りがします。煮詰めるまではとくに際立った香りもない植物なので意外です。また、結構すぐに色が出てきます。

完成

色は若干緑色に近い黄色といった感じ。味はそこまでクセも強くなく、香りもあり、飲みやすい部類です。ただ、以前飲んだ野草茶にも被るようなどこかで飲んだ味と香りで特徴に欠けるとも言えます。このカナムグラで作る「葎草」の効能は健胃整腸作用やそれに並んで利尿・解熱の作用があるそうです。

本草学の大著、「本草綱目」にも「五淋に主効あり、小便を利し、水痢(下痢)を止め、瘧を除く」と薬効が紹介されています。五淋とは尿路や膀胱にまつわる五つの症状を指し、瘧(おこり)は数時間から二日おきの間隔で平熱と発熱を繰り返す間欠熱を指します。
どこにでも生えているありふれた雑草でありながら、薬草として実は由緒正しいカナムグラ、覚えておいて損はありません。ただ、煙たがられる雑草だけに採集の際は付近の除草剤の散布状況などは要チェックです。
OK

鉄葎(カナムグラ)茶
10/22/2019

鉄葎(カナムグラ)茶

2019/10/21


畑で栽培する作物の中でもとりわけ作るのが簡単なシソ。一度畑に蒔いて栽培すると、翌年以降、特に何もしていなくても雑草と競い合うようにどんどん生えてきたりします。また、種子も適当にばら撒いているだけでも元気に育つというタフ作物です。今年も例によって畑の意図せぬ場所から沢山のシソが生えました。せっかくなので、保存食?調味料?の、ゆかりを作りました。


シソはシソ科シソ属の一年生草本です。シソ科のわかりやすい特徴は茎の断面が四角いこと。以前野草茶を作ったカキドオシヒメオドリコソウもシソ科です。
シソは中国が原産の植物で、漢字で書くと「紫蘇」となります。中国の三国時代の話で、蟹による食中毒で瀕死になっていた若者に名医がシソを薬草として与えたらたちまち元気になったというものがあるようで、シソに蘇るという字が含まれているのはこのためです。シソには殺菌・防腐作用や魚介類の寄生虫アニサキスの殺虫効果もあるということで、刺身のツマに使うのはとても合理的です。

葉を採集

梅干しを漬ける際に出た梅酢

梅干し作りの際、梅と一緒に赤シソを漬けると、梅のクエン酸とシソの色素が反応して赤く綺麗に発色をするため、色付けにもよく使われます(防腐効果の意味もあります)。ゆかりは、梅干しつくりで一緒に漬けた赤しそを乾燥させて、塩と混ぜて作ります。ただ、今年の梅干しはシソを使わずに漬けてしまったので、今回は以前取っておいた梅酢にシソを漬けこんで作ります。梅酢は塩分がしっかり効いていれば長期間の保存が効くので、置いておくといつでもゆかりが作れます。

ビニール袋の中で梅酢に葉を漬けこみます

クエン酸に反応して綺麗に発色

梅干し作りは梅を梅酢に一か月ほど漬けこみますが、今回はシソのみなので、2週間ほどで引き上げ。もっと早く引き上げてもいいかもしれません。

食品乾燥機にラップを敷き、乾燥

パリパリになればOK 葉なのですぐに乾燥できます


乾燥した葉はジップロックなどに入れて揉み砕いたり、すり鉢とすりこ木で粉状にしてやります。


梅酢に塩分が含まれているので、そのままでも味は良いですが、好みで塩を混ぜてもいいです。塩は海水から炊き上げた藻塩です。
シソの香りの成分は嗅覚を刺激して胃液の分泌を促し、食欲増進効果もあるとのことで、ご飯のお供にぴったりです。

シソは簡単に栽培できる割に、今回のゆかりだけでなく、シソジュース、薬味や紫蘇味噌、各種料理にと、あると結構重宝する優秀な作物です。スーパーの生鮮コーナーで買うと割高ですが、プランターなどでも簡単に育つようなので、気軽に栽培するのもオススメです。
OK
赤紫蘇で簡単調味料、ゆかり作り
10/21/2019

赤紫蘇で簡単調味料、ゆかり作り

2019/10/18


比較的買ったり収穫してからも日持ちがする作物、人参。とはいえあまりに長くおいておくとふにゃふにゃのシワシワになってしまいます。かといって畑に植えっぱなしにしてもとう立ちしたり、それに伴って中心部が硬くなってしまいます。

職場の畑にも人参がたくさんできており、丁度そんな状況なので、いくつか保存するために切干人参を作りました。

収穫した人参 一番形がきれいだったもの

畑でとれた人参は形のきれいなものばかりでなく、割れていたり、二股になっていたり、こぶがあったりします。畝の耕起が足りず、硬い土の塊があったり、石ころがあったりすると二股に割れてしまったりします。ほかにも未熟な肥料が土に馴染んでいなかったり、化成肥料が直接触れるようなことがあってもそうなってしまうそうで、いずれにしても時間をかけた丁寧な土作りが大切なようです。


葉を落として

きれいに水洗い

洗った人参は、皮をむいて、ひたすら千切りにします

切った人参は食品乾燥機へ。

天気が良ければ日中に干し網で数日干してもできます。いずれにせよちゃんと水分が飛んでいることを確認しないとすぐにカビてしまいます。

完成  甘味があってそのまま食べても結構おいしい。

切った状態で乾燥させる切干○○は乾燥も早く、調理に使うにも水に戻りやすく、切る手間も省けて便利です。乾燥野菜は作る過程で干すことにより旨みが増したり、栄養価が高くなる効果がありますが、中にはビタミンCに代表されるような水溶性ビタミンなど、干すことで壊れてしまう栄養素もあるとのことです。なので、干す野菜に含まれる主な栄養素を事前に調べた上で、作物により干すかどうかを選択するのがよいと思われます。

しっかり干した野菜はかなり長持ちもしますし、場所も取りません。収穫シーズン、どうしても穫れすぎて行き場のない作物が出てきがちなので、保存方法の引き出しはたくさん準備しておきたいです。
OK

余った人参の保存 切干人参
10/18/2019

余った人参の保存 切干人参

2019/10/15


紅葉も少しづつ進み、秋らしさが増すこの頃。イチョウの木の眩しいほどの黄葉までは、まだ少し時間がありそうですが、それに先立って現在木には大量の銀杏が実っています。この時期になるとポトポトと路上に落ちて、独特の匂いでその存在を主張してくるため、街路樹としては厄介者扱いされる事もありますが、銀杏(ギンナン)自体が好物だという人は多いのではないでしょうか。

そんなわけで近くにある大きなイチョウの木へ銀杏の採集に出かけました。

近くにある大きなイチョウの木

学校の理科でも習いますが、イチョウは裸子植物です。銀杏はいかにも種子が子房に覆われている被子植物のようですが、果肉のように見える部分は実は種皮が厚くなったもので果肉とは似て非なるものだそうです。

落ちている銀杏

果肉のように見える黄色い種皮も含めて全体が種子なのだとか。ということで、裸子植物のイチョウは分類としてどちらかと言えば針葉樹にカテゴリーされるそうです。葉の様子を遠目に見ていると広葉樹のように見えますが、実は違います。

採集

例によって銀杏は独特の匂いを発しており、皮膚につくと匂いがとれません。また、かぶれの原因にもなるので、ゴム手袋をして採集しています。

沢山採れました

採るのは楽しいですが、食べられる状態にするにはこの黄色い外種皮を何らかの方法で綺麗に取り除く必要があり、これが難関です。調べたところ、一つは採ってきた銀杏を水につけて(初めから柔らかいときはつけなくてよい)、柔らかくしてから一つ一つ手で剥いていく(臭い)方法。剥いたら最後に仕上げで水洗いをし、乾燥させて完成です。

収穫ネットに移す

もう一つは収穫ネットやドンゴロスなどの網状の袋に入れて土に埋める方法です。土に分解されるまで1か月ほど埋めておかなくてはいけないそうで、時間がかかりますが、放置で勝手に処理ができることや処理の際の匂いなどを抑えられるというメリットがあるとのこと。今回はこの土葬方式でやってみることにしました。

目の細かいネットと粗いネットに分けて入れ、分解される速度の差を観察します

ちなみに近くに住んでいる酪農家さんは、いらなくなった飼料攪拌機に大量の銀杏を投入して処理しておられました。便利。また、銀杏を入れたバケツに水を張って、ハンディの電動攪拌機で撹拌して種皮を取り除く方法もあるようです。

畑に穴を掘り、そこに入れます

埋葬。一か月後にまた会いましょう。

この土葬方式は調べてみると、「土に分解させて種皮を無くす」以外に「種皮は分解されきらず結局は手で剥く羽目になる」とか、「匂いを抑えながら種皮を柔らかくするための処理」など、色々な情報があります。が、実際に埋めて処理をした人の詳しいレポートはあまり見かけず、実際の所どれが本当なのかよくわかりません。昔から行われている方法のようですが、どんな結果になるのか、楽しみです。
OK



銀杏の採集と下処理
10/15/2019

銀杏の採集と下処理

2019/10/12


今年の畑作、夏野菜畑もそろそろ片付けということで、固定種作物の採種をやっています。今回は、先日のポンデローザトマトに引き続き、ステラミニトマト、さきがけピーマンの採種をしました。

ステラミニトマト

袋に記載されている採種法によると「完熟果から種をもみだし、ポリ袋などに入れて2,3日発酵させ(途中水を入れると発芽してしまうので注意)、水洗して沈んだ種を新聞紙に広げて半日陽に干し、日陰で十分乾燥させる。」とのこと。


包丁で半分ほど切り込みを入れて

指で強く摘まむと、中の種が綺麗にもみ出せます。

ポリ袋に入れ、常温で発酵させます

3日後。発酵によりガスが発生して袋がパンパンに。

ポンデローザトマトの採種でもそうでしたが、発酵させることでトマトの種の周りにあるゼリー状の果肉?がシャバシャバになるので、種だけを綺麗に洗い出せます。

ザルで余分な果肉などを濾して、種を水洗

キッチンペーパーの上で乾燥させます。

乾燥したら紙袋に包み、低温低湿度の場所で保管です。しっかり保存できれば種子寿命は4年以上とのこと。

赤く熟した、さきがけピーマン

トウガラシ類は南米原産。天正11年にポルトガル船が日本に伝えたという。ベル型のピーマンは明治初期に欧米より導入。カリフォルニアワンダーをウイルスに強く改良。果重60ℊ前後の早生の大型ピーマン。果肉厚く光沢ある濃緑色。果実の揃いも良い。(野口のタネHPより

切って種を出します

種子の袋によると、採種法は「一株当たり5,6個の良果を選び、赤くなった完熟果を収穫後数日追熟し、切り開いて種を出す。水洗はしない。褐色や黒い種があったら取り除く。」とのこと。

キッチンペーパーの上で乾かして、低温低湿度の場所で保管します。

採種の成否は来年の畑作までわかりませんが、ちゃんとできていることを信じて他の作物もどんどん採種していきます。
OK
畑作2019 固定種ミニトマト・ピーマンの採種
10/12/2019

畑作2019 固定種ミニトマト・ピーマンの採種

2019/10/11


先日のイナゴの流れで、以前住んでいた信州で食べた蜂の子の食べ方・調理法について紹介します。昆虫食全般の話については以前触れたため割愛します。

蜂の子は読んで字のごとく、蜂の幼虫です。採集の対象になる蜂の種類はだいたいクロスズメバチですが、オオスズメバチやミツバチ、アシナガバチなどもその対象になることがあるようです。

クロスズメバチ(Wikipediaより

クロスズメバチは地中に巣を作るので俗に「地蜂(ジバチ)」とも呼ばれます。以前、夜に隊列を組んで山狩りをしていた際に前の人がこのジバチの巣を踏んでしまい、飛び出してきたジバチに首を刺されまくったことがあります。スズメバチと名前はついていますが、毒は大したことがなく、ちょっとチクチクする程度で済みます。蜂の子にする蜂の中では味が随一とのことですが、採集の危険性が比較的低いことも食材として選ばれる一因かもしれません。

採集してきたクロスズメバチの巣

採集は、クロスズメバチに印付きの餌を持たせて追跡⇒巣の場所を特定⇒巣を煙などで燻り、掘り起こすという手順で行うらしいのですが、ぼくはまだこの巣の採集の過程はやったことがありません。今後習得したいことの一つです。というわけで巣の採集方法の紹介はまたいつか。

巣の中から蜂の子を回収

ここからが地道な作業で、巣の穴からピンセットで一匹一匹蜂の子を摘まみ出していきます。幼虫は柔らかいので潰してしまわないように気を付けながら取り出します。中には蛹やほぼ成虫になっているものもいますが幼虫同様食べられるので一緒にとっておきます。

摘まみ出した蜂の子たち。

見慣れないと壮絶な絵面ですが、一度食べてその美味しさを知ると、これを見た感想は「気持ち悪い」から「美味しそう」に変わります。


まずフライパンを熱してうすく油をひき、蜂の子を炒めていくのですが、火の通っていない蜂の子はとてもやわらかく潰れやすいので、菜箸などで強くかき混ぜてはいけません。フライパンを振るようにしながら潰れないように丁寧に炒めます。 水分を飛ばすように炒めていき、だんだん水分が飛んでくると、蜂の子がフライパン上でコロコロ転がるようになるので、そうなれば菜箸などで多少荒く混ぜても大丈夫です。水分が飛んでいたほうが食感がいいです。

一方で砂糖醤油を作ります

醤油と砂糖を1:1の割合で混ぜて作ります。砂糖醤油の分量は蜂の子の重さの三分の一程度が目安です。


砂糖醤油を熱して煮立ったら、コロコロの状態になった蜂の子を砂糖醤油の中に投入。蜂の子を入れたら火は止めて、砂糖醤油にからめます。味をしみさせるために一晩ほど寝かせたら完成です。

佃煮と言うと調味料の味が強くて素材の風味が感じられないものもあったりしますが、蜂の子佃煮はしっかりと蜂の子の味がしてとても美味しいです。ピーナッツ味の肉という感じで、甘辛い砂糖醤油がよく合います。長野に住んでいたときには地元の農家さんがこの蜂の子をおにぎりの具にしていたこともあり、最初見た時は衝撃的でした。地域によっては、日本のソウルフード、おにぎりの具になるほど一般的な食材なのです。

味よし、栄養価よし、保存性よしの蜂の子佃煮、ぜひお試しあれ。
OK




信州名物 蜂の子佃煮の作り方
10/11/2019

信州名物 蜂の子佃煮の作り方

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