2019/02/22

棕櫚(しゅろ)皮採集
2/22/2019

棕櫚(しゅろ)皮採集


 

かつては盛んに利用されていたものの、時代の流れで利用されなくなり雑草や雑木に紛れてしまっている植物は知ると案外身近に沢山あるものです。「棕櫚(しゅろ)」もそんな植物の一つです。

高知県の山奥で見つけた棕櫚 なぜか大木に寄り添うように生えている

棕櫚はシュロ科シュロ属に含まれる常緑の木本の総称ですが、大抵ワジュロを指して棕櫚と呼んでいます。ヤシの木と言えば馴染みがあると思いますが、熱帯のイメージのあるヤシの中でも棕櫚(ワジュロ)は耐寒性に優れ、かなり寒い東北地方でも普通に生えています。

勝手に生えてきた棕櫚の木

葉は蠅叩きや、籠、草履に、毛皮のような樹皮の繊維からは耐水性、耐久性の高いロープが作られたり、蓑、束子、箒、ささら、クッション材、火おこしの火口、畑のマルチ材などに利用されたりと多用途に使えます。幹は鐘を鳴らす撞木になったりします。そんな便利木本、棕櫚ですが石油素材の普及によって徐々に需要が減っていき、国内では現在利用する人も非常に少なく、山の中に雑木としてひっそり生えているのが現状です。


ただ、例外もあります。スポンジやブラシなど、水回り品の一大産地、和歌山県の海南市には今も棕櫚皮を採集するために造林された「棕櫚山」があります。数年前、実際に海南市を訪れた際に、棕櫚製品を取り扱う高田耕造商店さんの工場に伺い、実際に棕櫚製品を作る現場を見せて頂いたり、それにまつわる話を聞かせて頂きました。

伺った際に頂いたパンフレット

今でこそ素材が石油由来のものにとって代わられましたが、海南市が水回り品の一大産地となった原点は、かつて盛んだった束子やブラシ製造などの棕櫚産業にあります。主要素材が石油由来のものに変わってからも、棕櫚製品は作られ続けていましたが、国内の棕櫚も一度は低コストの外国産の棕櫚に押され、国内生産が途絶えかけていた事もあったようです。近年、そんな現状に危機感をもった地元の棕櫚産業に携わる方の働きかけで棕櫚山が復活したとのこと。突然伺ったのにも関わらず、代表の高田さんは丁寧に説明して下さいました。


このとき地元野上谷産の棕櫚を素材に使った束子を購入させて頂きましたが、輸入棕櫚の束子とは硬さが全然違います。高田さん曰く、国産の棕櫚束子はしなやかで体を洗うのにも適していて、使い込めば馬の毛のような質感になるとのこと。


実用品なので、使わないことがかえってもったいないことはわかっているのですが、下してしまうのが惜しくて未だに飾ってあります。余談ですがその時丁度「睡眠用たわし」なる商品を開発しているという話も伺いました。売り出されたらこれがかなりの人気で、最近まで予約待ち状態だったようです。調べてみると野上谷産棕櫚束子は2月現在注文多数で3ヶ月待ちの予約販売になっていました。なおさら使ってみたい気持ちと惜しい気持ちのせめぎ合いが激化しています。

購入した紀州野上谷産棕櫚束子(大)

前置きが長くなりましたが、最近そんな棕櫚の木の樹皮を採集しに行く機会があったので、その時の様子に沿って棕櫚皮採集を紹介します。

 

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