電光石火で火を熾す 火打石での打撃式発火法
人類最大の発明として、しばしば挙げられる火の利用。火は生活になくてはならないものであるが故に、火を操る道具はどんどん便利になり、火に纏わる技術は今や自分の身体的な技術とはかけ離れたところにあるように思います。
とはいえ、たった100年前にはガスコンロもライターもマッチもなく誰でも生活できていたわけで、はたまた今も世界のどこかにはガスコンロもライターも見たことのない人たちがふつうに生活をしているはずなのです。火の自給は生活の基本、習得せねば。
昔の火の道具
そこで、火の自給を考えてどんどんシンプルで原始的なものを突き詰めていくと、「摩擦式」「火花式(打撃式)」の発火法に行きつきます。で、今回は簡単にできる火花式の火熾しを紹介。
準備物たち
原理としては・・・
1鉄と、鉄より硬い石を打ち付ける。
2鉄が削れ赤熱した火花が散る
3火花が火の移りやすい消し炭状の火口に乗り、燃焼する
4赤熱している火口の熱で目的物の可燃ガスを発生させ、そのまま熱で発火させる
たぶんこんな感じ。火口と呼ぶものは、植物の繊維を蒸し焼きにした炭状のものから、オガクズのような焚き付け的なものまで幅が広いので説明が難しい。もっと細かく分類できんのか。
火打(燧)石
まずは火打石。鉄よりも硬度の高いものでないと用をなしません。今回はその辺で拾った石英。メノウでもいいし、チャートでもいいし、なんならお手元のルビーやダイヤモンドでもいいです。
火打(燧)金 火打鎌ともいいます
奥は市販の火打金、手前のものは鉄鋼ヤスリを削って作ったものです。火打金は鉄は鉄でも釘のような軟鉄ではなく、炭素の含まれている鋼が良いです。身近なものでは金ノコの刃や、金属ヤスリなど。ナイフも鋼のものがありますが、日本式の構造で軟鉄に鋼が割り込んであるようなものは刃の部分にしか鋼が出ていないので、だめです。ただ、電光ナイフは全鋼のようで、ナイフの背で火花が散ります。いずれも成功済み。
ちなみにこの火打金も自給したいので、それはまた追々たたら製鉄で作れたらなと計画中。また、自然から採集したものを使うなら黄鉄鉱が燧金となるそうで、これはヨーロッパアルプスの氷河で見つかった故・アイスマンさんも愛用していたそうです。
火口(チャークロス)
これは綿100%の帆布を空き缶で蒸し焼きにしたもの。自然のものではガマの穂やヨモギから作ったもぐさを蒸し焼きにしたものなど。身近なものだとティッシュの蒸し焼きでもいいですが、あまりの軽さに強風が吹いた際に無残に飛び散り山の肥しとなった経験があるので取り扱いには注意です。
棕櫚の木の皮
棕櫚は頑丈な縄、蓑、焚き付け、たわし、箒、葉っぱは蠅叩き、木本体は寺の鐘をつく撞木などなどと多用途な超有用植物。今回は、燃焼する火口を皮で包んで発火させます。
まず、火打石と火打金を打ち付けあい、火花を散らします。
今回は鉄鋼ヤスリを削って作った火打金を使っています。火打石の上に火口を置いて石と一緒につまんで、火打金を打ち付ける方法もあります。ちなみに電光石火の「石火」とはこの火花のことです。火打石を使い火を一瞬でつけられるようになれば、まさに「電光石火で火熾し」。
火花が火口に乗り、じわじわ燃焼をはじめたら、棕櫚の皮で火口をつつみます
棕櫚の皮はよく解してから使います。棕櫚の皮でなくても竹の削りかすや、市販の麻ひもをほぐしたものやなど、乾いてふわふわした繊維状のものであればだいたい大丈夫です。
しっかり包んで
息を吹きかけるとどんどん煙が出てきます
そのうち発火します
炎上 この火を目的の焚き付けなどに移して安定した火を作っていきます
ただ、火を完全に自給したいのであれば、やっぱり摩擦式。これはすべて拾ってきた材料で火を起こせるので、火を自給!!と胸を張りたいならこっちかも。こちらはまた追々。
OK
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